おすさんと古いオメガとマーマレード

殿様の付き添いで愛知県に行ったのですが、お彼岸なのでお参りができました。当地ではお坊様のことを「おすさん」というのです。最初に聞いたのは、殿様の父君が亡くなられた時。「もうじき、おすさんみえなさるで…」「おすさんみえたらおろくぜんを…」と、むむむ、関東圏から出たことのない私には「暗号…?」な言葉が飛び交っていました。前後の脈絡からどうやらお坊さんのことをいうらしい、となんとなく理解したものの、「和尚さんのなまったものかな」くらいに思っていました。
今回、お彼岸のお参りにゆき、久しぶりにおすさんのご尊顔拝見し、ああ、あれからずいぶん経つんだなぁ、と思い。しかし、お彼岸オンタイムのおすさんはモーレツにお忙しいのです。まずお寺へ着いたら受付をする。→ 本堂では絶えることなくおすさんたちの読経。「書記」と書かれた係りの方は一心に筆を持たれ、お塔婆を書かれる。→ 書かれたお塔婆が仏様の前に一旦安置され、おすさんが順番に来た人のお名前を読み上げてくださる。→ 呼ばれたらお焼香をし、書き上げられたお塔婆をいただいて辞する。という流れ、これを一日ずっとされるのだ、とおもったら、なんと大変な、と思ってしまった。お彼岸は大変です。

f0367170_15514969.jpg

神社で言う狛犬さんの位置にお馬がいる。美しかったので撮りました。それで、おすさんですが、調べてみましたら漢字で書くと、押忍さん…ではなく「御主さん」でした。納得。お寺の「代表の方」という意味ですね。そうだったのか…。

f0367170_15515045.jpg

あじさいの美しいお寺さんだとみんなが教えてくれましたが、今は春。咲き分けの綺麗な椿が咲いていました。映画「椿三十郎」だとこれは「突入せよ/突入不可」のどっち、という、一本の木にいろいろな色が咲く木。

お昼を食べたお店(美味しかった。海の近くはお魚が美味しい)で、母君の着けている腕時計が素敵だったのでそう申しましたら、外して見せてくれました。オメガだ。

f0367170_15515080.jpg

「すごく古いのよ」って。亡くなった父君(つまり彼女の夫ですね)が、海の向こうから買ってきてくれたお土産だそうです。ベルトが三色付いていて、ネイビーブルーのが傷んだので、この色に替えたそう。うつくしい。昔の物はいいですね。しかも、へんにエレガントでないモダンなデザインを選ぶあたり、妻の好みをよく理解しておいでだ。趣味人で感性の豊かな方でした。ちょっとしかお目にかかれなかったけれど。

お寺の後、みんなでお墓参りに行ったら、お墓の敷地内に大きな甘夏ミカンの木があって、たわわわわわに実が生っていました。獲る(盗る)のは悪いかなーー、と遠慮して、ひとつ、木の下に落ちていたのを拾ってきました。
母君たちが「美味しくないと思うよぉぉぉ」と心配する中、夜、お鍋を借りてマーマレードに煮ました。皮を剥いて刻んだのを沸騰したお湯で二、三度ゆでこぼす。→ ざるに入れた種をお鍋にセットしてお水少々で煮て(ペクチンを抽出)、先の皮と果肉(袋は捨てます)を加え、お砂糖(三温糖だったのでそれで)を加えて更に煮る。小一時間で完成。作業していると、母君が「あんたたちはまー、いつもこんなタダみたいなものを食べてるの?」と言うので笑う。殿様が持参したのも「庭で獲れた蕗で作った蕗味噌」だったからなあ。ないものあるもの精神で、タダのものを活かすのが何より愉しいという、しかも、嘘がなくて美味しいものね、自家製は。

三つに分けて、母君と兄君に差し上げた残りを東京に持ち帰りました。美味しくないといかんから。モニタ用。

f0367170_15515085.jpg

また、なまこリュスティックを焼いて、食べる。

f0367170_15515167.jpg

うん。大丈夫だ。急いで作った割にはおいしい。どうも割と甘い夏みかんだったらしく、酸味が少し足りない。そのまま食べられたかも。

遠い土地はおもしろいです。若い頃は「ひゃー」と驚いたこともあったけれど、今は、人間はいろいろなものを守ったり、守られたりして、それぞれの地で生きていて、そして、亡くなって。いずこもそれぞれに、大事にすることがあって、そういうものなのだね。と静かに思います。



[PR]
by tsunojirushi | 2017-03-24 16:43 | 日々の出来事 | Comments(0)