一澤の鞄を別注する

若い頃、どうやって知ったかは忘れてしまったが大変に憧れて、京都まで買いに行ったことがありました。当時は「一澤帆布」といいました。八坂さんを目印にバスに乗ってドキドキしつつ訪ねて行って、初めて買ったのはボストンバッグ。好きな色の持ち手を付けますよとおっしゃってくださったので、黒の本体にベージュの紐を選び、数か月わくわくして待って、受け取った時は嬉しかった。荷物を開けると、カバンはコーヒーガムみたいな香りがしました。当時の防水剤のにおいだったのだと思います。今はしません。
記憶の中にあるお店は木造で、床も年季の入った光る木で、たくさんの鞄がかかり、奥には職人さんたちがいらして、それは素敵な空間でした。ガリ版刷りみたいなカタログをくださったので、その後いくつか送っていただいて買いました。が、その後私は病気で手が痛くなったこともあり(斜め掛けの軽い物しか持てなかった時期もありました)、ひとつずつ手放して(D&Department Store のフリマで売ったり)残っていません。今となっては、とっておけばよかった・・・と思います。
その後、継承に関して問題が起きたことをなんとなく知りました。悲しい気持ちになったのを覚えています。

昨年、お洒落な先輩が使っておいでで、それには「㐂一澤」のタグが付いていました。綺麗でした。これなら持ちたい、と思いました。先輩はお店の分かれた事情などもご存じで、それも聞かせてくださいました。その後、お金を貯めて、横浜のそごうに出店されるのを待って買いに行き、黒い鞄を一つ買いました。


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本来はこの鞄、ステッチはアイボリーの糸です。別の型の黒い鞄にこの国防(一澤さんではそう呼ばれているようなので)の糸が使われているのを見て、「年を取った自分には、この黒にアイボリーの元気な組み合わせがちょっとしんどいので、できることなら、こちらの国防の糸で仕立てていただけませんか?」とお願いしました。お店の方は少し考えられて、「京都に持ち戻って相談してご連絡します」とのことでした。ドキドキして待ちましたがちゃんと電話があり、「お作りします」と製作にかかってくださり、数か月後に届きました。初恋の人に再会。
思った通りの地味さ加減、これなら、くたびれた自分でも大丈夫です。とても気に入っています。私にとっては贅沢な、「ここぞ」という仕事に持ってゆく勝負カバンです。


と、買ったのはけっこう前なのに、今頃これを書いたのは、ハガキを頂いたから。

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久しぶりの出店。芝居の初日でちょうど池袋に行くので、身体の痛さ次第で覗けたら覗いてみようか。買わないけれど、眺めるだけね。このハガキもなかなか素敵ですよね。奥ゆかしく、真面目でいい。


昔のタグには「知恩院前上ル」と、住所が書かれていたように思います。(というのを確認したくて今、画像検索を掛けたら、復刻タグなるものを見つけた…。うーん…。) 
手放してしまった初号ボストンや、小さなキャメルのバッグ、赤いトート、みんなどこかで誰かが使っててくれるといいな。使い込んだカンジもまた、いいんですよね、帆布のカバンって。今回のこれも、大事にながく使いたいです。


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by tsunojirushi | 2017-07-14 13:00 | ちょっといい | Comments(0)

バッグのリメイク

お仕立てご依頼の中で緊張するものに「リメイク」があります。修理ももちろん緊張しますが、何かを丸ごと使って別の物にする場合、当然、当初の物は壊して使うことになります。一点しかないものですから、取り返しがつきません。念には念を入れ、なるべく安全に準備工夫をし、途中で何度も確認して作業を進めます。

今回はずっと以前に使われていたという藍染めのリュックを、もっと気軽に使えるようなバッグにしてほしいというご依頼でした。
そこで、まず 試作品(←を作った記事に飛びます) を作り、それを確認していただいて、本番にかかります。
失敗を防ぐため、ただの四角いものですが型紙を作りました。そして、裏地の作業から進めていきます。猫とモノトーンでまとめるので、裏は可愛いキャンバス地を。

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カバンものは使いやすくてなんぼ、と考えているので、ポケットなど、裏側にかなり時間がかかります。上の写真はポケットを付けたら偶々猫がこんにちはしたの図。(孤独な縫い物屋、独り微笑む)
裏側やショルダーストラップなど「外堀から」攻めて行って、いよいよ本体を切りだしますが、ここでまた新たな型紙を作りました。柄の出方を確認するための、「ネガポジ型紙」です。


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窓になっていて、形が確認できるもの。これで位置を正確に決めて、それからおもむろに普通の型紙を当てて、裁ち出しました。手間はかかりますが、こういうことでひとつひとつ安心して進められるので。表生地には芯地を貼りました。旧いものなので柔らかい風合いで良いのですが、バッグにはちょっと足りないので。

後は成形です。じつは、ここからは一つ一つの作業を丁寧に進めるだけなので、気持ちはかなり楽になっています。洋服を作る時も裁ってしまえれば後は楽なのです。

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口にはマグホックを。それから、ショルダーストラップを付ける金具を付けて、ちょっと手で持てる(これは肩から下げたのを外している時、ひょいと持てると楽なので)革の持ち手を付けて…、細かな作業が続きます。

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最後に、Yせんせいが浅草の革やさんで貰ったという黒猫の革モチーフに目打ちで穴を空け、持ち手に掛けました。Yせんせいにも完成形をお見せしたくて、この記事を書いています。せんせいありがとう。
完成はこんな感じ。


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ストラップは取りはずし可。斜め掛けにも手持ちでも。中にはポケットが二つ、ひとつは仕切り付き。お納めする前に記念撮影しました。
大きな失敗がなくて良かった。新規のものは、極端に言えば、失敗してもまた材料を揃えてやりなおすという道があります。でも、リメイクはそれが不可能なので、本当に心してかかります。
ただし、バッグは「ここから」です。どんなに見た目が素敵でも、使い勝手が悪いものはどうしようもない、と思っています。力のかかる場所、ものを出し入れするときの具合い、使いやすいといい、と心から祈っています。
お役にたちますように。手も眼も不自由で、なかなか着々とはできないけれど、ひとつひとつ、何かを整えて、こしらえて、少しでも役に立ちたいと思っています。




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by tsunojirushi | 2016-12-21 13:52 | 縫いもの・拵えもの | Comments(4)

小さいバッグ試作

バッグのお仕立てのご依頼をだいぶ前に受けたのですが、元になる素材をお預かりしたのがプレッシャーになって(一点ものリユースのためゆめゆめ失敗できない)、なかなか進まずにいました。そこで「そうか!プロトタイプを作ればいいんだ!」と、作ってみました。「こんな形でいかがでしょう」という試作品・サンプルです。以前、笛の袋を縫わせていただいたときも、先に一つ作り、試着(笛が)してもらって微調整して本番(安心して縫える)を縫い、結局二つとも納品したんでした。

プロトタイプですから、基本的に在庫の生地などでまかなうのですが、まずはバッグのかなめ(と思っている)裏側を作ります。

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あまり布のデニムを裏づかい。そこへ、クッションカバーご依頼品の残り布でポケットをつけ、幅広ゴムでペン差しを付けます。反対側にはケータイポケットが二つ付いています。外側は黒に黒でプリントがしてある帆布みたいな生地です。これはワゴンセールの端切れを買いました。それに芯を貼って。表裏仕上げて成形したものがこれ。

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今回の試みとして、「小さいショルダーバッグだけど持ち手が付いている」という形にしたいので、しかし試作ですから百円屋さんで、小さなパチンと留める持ち手を買いました。それを付けて。本番はちゃんと革を縫い付けにする予定。


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ショルダーはこれは別のバッグ(トルコのお土産・左)用に作ったものを共用。Dカンだけ付けました。なのですが、どうもサイズの計算を間違えた。マチ巾を少し大きくした時に横幅を増やすのを忘れた…。ために、縦長になった。うーむ。正方形っぽいイメージだったのに。プロトタイプやり直しか。

裏側は、写真見えにくいですが、こんな感じ。

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バッグを作る時、この内側を計測して設計して作るのに実は一番時間がかかりますw ごちゃごちゃしない、ものが探しやすいカバンにしたいから。最近はケータイ、スイカ、とか、あとiPadとかですね、サイズを工夫します。オレンジの布にしたのはちょっとしたお守り気分。どこかがひっそりお揃い、って良いものですから。
それはいいけれど、サイズだよなぁ。うーむ、修正して、プロト第二号を作るかなぁ…。



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by tsunojirushi | 2016-09-12 23:04 | 縫いもの・拵えもの | Comments(0)